写真家 中川正子さんの「ダレオド」出版記念イベントに参加して ~誰もみていないように踊って~

瀬戸内市立図書館で8月26日、トークイベント「写真集『ダレオド』を生んだ二人のおはなし」がありました。

参加のきっかけは、同図書館のホームページに使われている写真が好きだったことです。

他の作品を見たこともなく、他の作家を含め、写真集を購入したこともない。でも、写真家が文字ではなく映像で何をどのように表現しているのかを知りたくなったので参加しました。

中川さんの人柄や考え方、写真を通して伝えていること。写真を撮ることも、家族と暮らすこともすべて同じ主軸を生きていることが語られました。その記録と共にお伝えしたいと思います。

 

初版1000部を流通に乗せず、顔の見える形での販売をしている、写真集「ダレオド」
今回のイベントは、2017年4月に発売以降、9回目の行商です。
(この日時点で初版は残り少なくなっているとのこと)

 

「誰もみていないように踊って」との出会い

題名の「ダレオド」の元になった言葉は「誰も見ていないように踊って」です。この言葉は、中川さんが10年ほど前にニューヨークのスーパーで見つけたポストカードの言葉でした。

誰もみていないように踊って。
誰も聞いていないみたいに歌って。
傷ついたことなどないように愛して。
この地上が天国かのように生きて。

(原文は英語。後日、図書館とWEBで探したことも最後に記載しています)

 

正子さん

この文章を見たとき、脳裏に浮かんだ景色があります。
そのころから私の中に残り、今の活動に繋がる象徴になっています。

踊る。歌う。愛する。生きる。
どの動詞を使った言葉も好きだけれども、一番自分に最も惹かれたのが、踊るでした。

変な東洋人だと思われたかもしれないけれど、その場で号泣。そこにあったストックすべて買って帰りました。

 

 

出産と震災と移住と

中川さんが東京で出産して11カ月、東日本大震災が起こりました。
度重なる変化の中で感じたこと、変化について話してくださいました。

正子さん

出産して11ヶ月。身体的にもゆっくり歩いて周りを見るようになった頃、東日本大震災を経験しました。
夫の仕事が岡山で始まることもあり、放射能への不安を抱えて岡山へ3月に移住。

 

様々な不安さから、焦り自分が出来ることを探すなかで、東京で開かれていた原発反対のデモへ新幹線を使って毎週参加したんです。
1万人くらいの群衆の中で「原発反対-!」などのシュプレヒコールをあげた。ひどい言葉を投げつけるように声をあげていた人もいました。

 

デモに参加して声を上げる度に、コレじゃないなって考えていました。
「私がやりたいこと、目指していることはこういうことじゃない」と。
終わりのころには、自分自身の中に生まれた違和感を見つめ直す為に参加していたように思います。

 

移住までの東京での生活は、やりたいことをやり尽くし、消費世界の中で生きる生活でした。
移住や出産で、立ち止まって考える機会をもらった。

立ち止まってはじめて、「政治」「原発」「戦争」「消費社会」など物事の仕組みに興味が広がった。

 

30歳を超えて、物事の仕組みに興味を持ち始めるのは遅かったかもしれない。生活に直結することでも、具体的に考えてこなかった生活を認識するきっかけになりました。

 

「ダレオド」制作の姿勢

様々なきっかけを経て、何を感じて何を表現していくのか。
集大成としての「ダレオド」に込める姿勢について。

 

正子さん

岡山に移住して6年経ちました。

移住時には0歳で守りの対象だった子どもも成長し、小学校への入学しました。そのころから東京との二拠点生活をする中川正子ではなく、岡山の人としての立ち位置を意識していたように思います。

 

新しい写真集の仮題に、誰も似ていないように踊ってを略して「ダレオド」と呼ぶうちにそれ以外の名前が考えられなくなりました。

私にとっての踊りは撮影することだった。

 

ダレオド。
それは、自分はどんな世界を選んでいくと決めたかということ。そして、ここにある美しいもの光を手放すつもりはないという決意。こう生きていくを、自分の選択として伝えたい。

 

原発反対とか、どうして選挙いかないの?と、焦って他人を変えることに躍起になるのではなくて、変わったと思っている自分の考え方を、みんなもそうするべきと広めるのでもない。

 

自分がこうであるということを宣言すること。
そしてそれを押しつけないメッセージを出すことだと思うんです。

 

そんなことを考えて居ると10年前に頭に浮かんだ映像がよみがえった。改めて象徴のように感じたんです。

だれかの評価に頼るのではなく、自分自身で選択する姿勢が美しいと思う。それが大きいものに支配されない生き方ではないかと思います。

この出版の活動は、「平和活動」だと思っています。

 

「BOOK MARÜTE」と、出版レーベル「Pilgrim」

 

香川県高松市にある「BOOK MARÜTE」は、瀬戸内海に面した路地裏の倉庫街 北浜alleyにあります。
その代表である小笠原哲也さんと、場の力についてのお話です。

 

 

正子さん

「BOOK MARÜTE」クレイジーな程とんがった場所は東京にあると思ってた。でも、瀬戸内にあった。
東京では出会えない人に出会える場所でもある。

 

この素晴らしい場所を作り育てている、てっちゃんの様な人がここ、瀬戸内に居る。
それなら私もここでやっていけると思った。

 

言葉としてはダサいかもしれないけれど「瀬戸内から世界へ」と言えるクオリティをもったモノを作り出すと決められた。

 

 

瀬戸内の可能性と写真

BOOK MARÜTEを3年前にスタートした時、3年後には出版レーベルを始めることは決めていたという小笠原哲也さん。
なぜ写真なのか。そして瀬戸内の可能性についてお話しして頂けました。

哲ちゃん

 

古道具店として古い家丸ごとの整理を引き受けることもあり、放置されたアルバムに触れる機会が何度かあった。
人の一生が記録された写真アルバムが受け継がれずに捨てられそうな現場でした。
僕が持っていても仕方がないんだけれども、捨てられなくて作品としての写真集ではなく、写真のアルバムのコレクションが増えてきている。

 

写真の魅力は、過去には誰も遡れないこと。記録ともいえると思う。
記録という面においては、有名な人であっても無名な人であっても違いはない。
世間に発表されなくても、素晴らしい写真はきちんとある。

 

素晴らしい作品を世の中にだす、世界的に有名な写真家も沢山いる。
そんな人の作品を仕入れてアートブックを作成する事業は多くの人がやっている。

 

世界的に日本のアートといえば、瀬戸内が一番に上がるくらいに有名なんです。
そこで、誰もやっていないことをはじめることは世界に繋がると考えている。

 

自分が関わるのであれば、誰もやっていないことをやりたい。
それを出版レーベルで表現すると決めていた。そして瀬戸内の写真家と世界に通用する作品を作った。
その第一作目がこの「ダレオド」です。

 

ただの図録ではなく、作品としての価値を持つ様、構成や印刷する用紙、プリントにもこだわった。
山田写真製版所のプリンティング・ディレクター熊倉桂三さんにお願いしたのも、世界に通用する作品を作るという思いを具現化する為なのです。

 

写真集のテーマは光

始まりは東日本大震災。
3.11以降、中川さんはアートブックを2冊(新世界とIMMIGRANTS)出版されています。
それぞれの作品の特徴を簡単にお話し頂いたのでまとめています。

「新世界」

出産をして11ヶ月後に震災が発生。
この二つの大きな変化を生む出来事で、世界の見え方が崩れて再構築された。

出産、震災を通じてそれまでの自分が通用しない世界に出会った。
物理的にゆっくり歩くようになった。
そうすると見えてくる世界が違ってきた。

目に映るものを新しいものとして、
同じように見えるものも違うものだとおもって、
名前をつけようと思って作った作品

「IMMIGRANTS」

英語で移民たちという意味の題名。

岡山に引っ越してきて、東京と同じことを岡山でやろうともがいていた時期。
同じように岡山に移住してきた人たちとの暮らし。

移民たちがそこから根をはって生きていく暮らしに焦点を当ててた作品

 

そして「ダレオド」

改めて過去の2作品との比較を含め「ダレオド」のテーマについてのお話しです。

 

正子さん

「新世界」「IMMIGRANTS]の2冊は、暗くなってしまった世界に対して、明るい部分を切り取って見せる活動でした。
今振り返ると、光だけを拾い集めることはやりつくした様に感じています。

 

光を表現するだけではなく闇の部分も出していくタイミングが、今。
闇があるから光が際立つ様に、闇を無かったことにする切り取り方にはしたくなかった

 

闇に対抗する光を集めるのではなく、闇のなかで小さくてもひかりをみんなで持ち寄ればプラネタリウムのような景色が広がると思っています。

光のような、場所や人や瞬間を集めた作品です。

 

何かを何かで塗りつぶしてしまうのではなくて、違うレイヤーを生きること。
そう生きるうちにいつか、フォトショップの機能のようにレイヤーを統合することが出来るのかもしれません。
そのことが、同じ地上を生きることに繋がるのではないかと思います。

 

 

考え方に触れてのミタニの感想

 

ダレオド。この言葉がすごく好きになりました。
中川さんはこの言葉から浮かんだ情景を、写真で表現していた。
では、僕は何で表現をしていくのか。

それはきっと、どの仕事をするかとか、どういう表現をもって社会に発信するかではなくて
ただただ、自分がどう生きるかに繋がっているのだと思います。

だからこそ、ダレオドのテーマである「光と影」の対比は様々な面に言い換えられる。
例えば「地方と都会」「親と子ども」「仕事と趣味」のように。

 

中川さんは「自分自身の違和感に敏感」とも話していました。
写真を撮影した時、過去の成功事例にすり寄る自分自身への違和感を大切にしていると。

それをどのように手に入れるか。
それは、自分自身で判断をする練習を積んだ成果ではないでしょうか。

 

全部で4700文字もあるこのブログ、最後までお読み頂きありがとうございます。

 

人の生き方への興味を大切にしたい。
人に焦点を当てたイベントレビューをこれからも続けます。

新しい記事を書いた際には、TwitterでPRをするので
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おまけ:原文探索

原文を探索しました。(まだまだ不完全です)
ネットで調べて、原文の発言者として濃厚だと思える牧師の名前が「Alfred D. Souza」でした。

調べものはまず図書館!と思い、岡山県立図書館でレファレンスをお願いました。
結果、国会図書館データの検索までしても著作は出てきませんでした。

何か別の方法でもう少し探してみようと思います。
中川さんがステートメントに乗せている英文は「Dance like nobody’s watching」です。

Dance as though no one is watching you.
Love as though you have never been hurt before.
Sing as though no one can hear you.
Live as though heaven is on earth

1行目の文章「Dance as though no one is watching you.」をGoogle検索すると多数のポストカードが出るので
興味のある方は検索をしてみて下さい。

 

<追記>

中川正子さんに興味を持たれた方は、インスタグラムフォローしてみてください。
美しい画像がアップロードされています。 https://www.instagram.com/masakonakagawa/

BOOK MARÜTEのホームページはこちら → http://book-marute.com/
(ネットショップも併設しています)

*丸いアイコン画像については、BOOK MARÜTE様よりご提供頂きました。
感謝と共に、ご報告致します。

 

「ダレオド」特別装版が出たみたいです!